「葛藤」にも向き合った21年の競技生活

晴れやかな「卒業」報告だった。フィギュアスケートの2016年世界ジュニア選手権女王、22歳の本田真凜(JAL)が1月11日、東京都内で開かれた記者会見で競技からの引退を正式表明し、今後はプロスケーターとして活動する考えを明らかにした。

現役最後の試合となった2023年12月の全日本選手権は28位。インターネットテレビ「ABEMA」などで生中継された会見では「2歳の時にスケートを始めて21年目。いろんなうれしさに出会えた。いろんな葛藤にも向き合って乗り越えてこられた」と心境を吐露しつつ「全ての思い出にスケートがある。いい時もそうでもない時も周りに寄り添ってもらい、幸せな競技生活だった」と笑顔で振り返った。

ジュニア時代から表現力豊かな華麗な滑りで頭角を現し、2017年世界ジュニア選手権では日本勢初の2連覇こそ逃したが、2018年平昌冬季五輪金メダリストでロシアのアリーナ・ザギトワに次ぐ2位に入った。

ただシニア転向後は重圧にも苦しんだ。「世界ジュニアで優勝したあたりから注目していただくようになって。どんなときもカメラの方が一緒で『良かったな、幸せだったな』と思うこともたくさんありましたけど、小さい頃の私は『つらいな』と思うことももちろんありました」と振り返りつつ「順風満帆って見えなかったかもしれませんが、その当時の私よりスケートは好きですし、幸せです」とスケートへの「特別な気持ち」をアピールした。

憧れの浅田真央さんから心に響くメッセージ

笑顔にあふれた会見では競技生活の支えになった家族やコーチへの感謝を述べる一方、憧れの存在と公言する五輪メダリスト、浅田真央さんからのメッセージの一部を打ち明ける場面もあった。

「いつも私がつらいなとか思っている時に、何かを察して、私の心に響く本当にすてきな言葉をかけてくださる。一番は真央さん。全日本が終わった時にも『最後まで小さい時から逃げずにここまで頑張ってこられたのは、すごい偉いことなんだよ』という言葉をかけていただきました。そして新しいスタートも胸を張って思い切り進んでいけばいいよ」と優しく背中を押してもらったという。

プロスケーターとしてアイスショーなどで活躍する浅田真央さんの存在は、プロ転向後も大きな目標になるのだろう。

新たな挑戦、昨年は王女ビビ役も

大学4年生のタイミングを区切りに競技から離れることは「ずっと決めていた」という。今後は心機一転、アイスショーなどでプロスケーターとして活動する。

2023年夏には交際を公表している世界王者、宇野昌磨(トヨタ自動車)が主人公の少年モンキー・D・ルフィ役を熱演したアイスショー『ONE PIECE ON ICE〜エピソード・オブ・アラバスタ〜』にも王女ビビ役で熱演し、新境地を見せている。

「滑り続けられる限り、今後もスケートを続けていきたい。チャンスがあれば新しいことにも挑戦していきたい」と力強く意気込む。

きょうだいで切磋琢磨しながら習い事は「アイスホッケー、体操、水泳、テニス、ピアノ」など幅広く挑んできたと言うが、いつしかフィギュアスケートは「本当に大好きで特別なもの」になった。「スケートを滑っている時間が一番輝けていると感じる」。その華やかなスケーティングと周囲を魅了する表現力で新たなスタート人生の第2章が始まる。

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